2010年7月26日月曜日

「フリーエージェント社会の到来」読みました

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるかフリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか
ダニエル ピンク 玄田 有史 Daniel H. Pink

ダイヤモンド社 2002-04
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この本は2002年に出版されて、それ以来ずっと話題になってきて、なんども読むチャンスはあったのだが、なかなか読むに至らず、つい先日、やっと読むことができた。

今までの「企業(できれば大企業)に就職し会社に忠誠をつくし、合わない部分もぐっと堪えて、そうしていると昇進して定年まで勤め上げることができれば退職金も貰えて年金も貰えて家族も養えて暮らしていくことができるよね」といったような古き良きサラリーマン・ビジネスモデルが崩壊したあとの、広がりつつある、もうひとつの生き方、スタイルをまとめた本。

日本ではバブル崩壊後、大企業が倒産やリストラを行い、今までの日本の強さであるところの終身雇用制が崩壊していって云々、というストーリーは身近なものであるのだけど、アメリカでも同様のことが起きていたというのは、あまり認識がなかった。

終身雇用制というのは自動車なんかの高度に集積され、画一的なものを工場で大量生産する製造業において非常にメリットが大きいスタイルであって、製造業が新興国にシフトしていった現在、先進国では終身雇用というのはデメリットが大きい。

企業のライフサイクルも短くなり、多くの従業員の雇用を長期間維持することは現実的ではなくなってきていて、サービス業や情報産業などの個別のカスタマイズに価値をおき、マーケットの変化に対応しやすい小規模な企業のほうが生き残りやすくなってきている。その究極のかたちがフリーエージェント(フリーランス)だ。

小規模企業やフリーランスのメリットのひとつは、1つの会社に勤めないで複数の顧客(企業)の仕事を分散して行うことでできること。ポートフォリオを組むことができるので、仮にどこかの顧客企業が業績不振になったとしても、自分への損害をある程度絞り込むことができる。もしそこでフルタイムで働いていたとしたら急に失業者になってしまうかもしれない。変化の激しい時代にはひとつの企業に勤めるよりもフリーランスでいたほうがより安定している、ということがいえるわけだ。

フリーランスでいることは時間を自由にアレンジすることができるのもメリットだ。7時に起きて8時に電車に乗って,9時に出社して17時に一旦終わるけど、毎日、残業は21時までで家に帰ると22時で、子どもはもう寝ている、というような生活はする必要がなくて、例えば、夕食の時間は家族と一緒にすごし、子どもを寝かしつけてから夜再び仕事をする、というようなことだって全然できてしまう。

このようなことが可能になったのは、上に書いた産業構造の変化と共にITの発達によるところが大きい。以前は会社でないと扱えなかったコンピュータが自宅で使えるようになり、インターネット回線の高速化、クラウドの発達などが相まって、特に会社で仕事をしなくても自宅で同じことができるようになってしまった。

こういう視点でみると、IT革命というのは、やはり産業革命に次ぐ大きな産業構造の変化だということになるのではないか。それにより人々の生活スタイルは大きく変わっていく。

もちろんフリーランスでいることでの困難さということはある。たぶん仕事は自分で見つけていかなくてはいけない。会社だったらどこからとも無く仕事が降ってきたりするわけだが、自ら動いて営業活動がきちんと出来ないとフリーランスでいることは難しいだろう。その他、税金周りや売上の回収など、色々たいへんな部分というのはある。このへんがやり切れないようだとフリーランスで居続けることは難しいだろう。

今、僕はCoworkingについて結構パワーを裂いて(その割には細々と)やっているが、実はCoworkingというのは、このようなフリーランスの困難さ、というものに対するセーフティネットのようなものとしても機能すると思っている。例えば、Coworking仲間の誰かが仕事を手伝って欲しい、というふうに依頼してくるかもしれない、確定申告の手続が分からなければ、横にいる人が教えてくれる。自分も自分の持っている情報やノウハウ、アイデアを隣の誰かに教える。そういう互助的なネットワークをもつことによってフリーランスでいることの困難さをある程度カバーできるのではないか。そう思っている。

というわけで「フリーエージェント社会の到来」は8年前の本とは思えないほど、今にマッチした本だと思う。読んだ人も多いと思うが、読んでない人はぜひ。

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