2010年7月27日火曜日

「ニューノーマル」を読みました

ニューノーマル―リスク社会の勝者の法則ニューノーマル―リスク社会の勝者の法則
ロジャー マクナミー デビッド ダイアモンド Roger McNamee

東洋経済新報社 2008-09
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ニューノーマルという言葉、2008年の金融危機以降によく耳にするようになった記憶があって、実際に「リーマンショック ニューノーマル」などでググってみると、そのような文脈で書かれているものが色々出てくるのだけど、この本は2004年に出版され、アイデア自体は2002年に雑誌で書かれたもののようだ。

つまりこの本は、IT技術の急速な進展とグローバル化という文脈において、従来とは違ったルールで社会が動いているということで「ニューノーマル」というタイトルがついている。


このなかで、著者のマクミナーはIT技術の急速な進展とグローバル化のなかで4つの視点が重要だと説いている。本書から引用すると、以下になる。


  • 個人の力が急速に高まっている。
  • かつてなく多くの選択肢が与えられる一方で、必要とされる決断も増えている。
  • 技術とグローバル化は確固たる事実である。この二つが経済を支配し、この事実は今後も変わらない。
  • 時間が不足しているのは誰も同じなので、持っている時間を最大限に利用することが不可欠である。


これは先日ブログに書いた「フリーエージェント社会の到来」にも同じようなことが書いてある。つまり、個人の力が強まってきたなかで社会構造が変わりつつあり、ビジネスのルールも変わってきている、というだ。

Coworkingを推進する立場としては、本書の9章(個人の重要性はこれまでになく高い)と15章(「小」の影響力と質の向上)は特にお薦めする章だ。ここだけでもこの本を読む価値はあると思う。

以前の事業を営むには大企業があらゆる面において有利だったのが、変わってきている。大企業に対し個人という小規模な単位がクローズアップされてきているのは、何やら恐竜の時代から哺乳類の時代への変化を想起させる。巨大隕石によって恐竜が絶滅したという説が有力なようだが、この技術の進展とグローバル化は巨大隕石のようなインパクトをもつものなのかもしれない。

2010年7月26日月曜日

「フリーエージェント社会の到来」読みました

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるかフリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか
ダニエル ピンク 玄田 有史 Daniel H. Pink

ダイヤモンド社 2002-04
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この本は2002年に出版されて、それ以来ずっと話題になってきて、なんども読むチャンスはあったのだが、なかなか読むに至らず、つい先日、やっと読むことができた。

今までの「企業(できれば大企業)に就職し会社に忠誠をつくし、合わない部分もぐっと堪えて、そうしていると昇進して定年まで勤め上げることができれば退職金も貰えて年金も貰えて家族も養えて暮らしていくことができるよね」といったような古き良きサラリーマン・ビジネスモデルが崩壊したあとの、広がりつつある、もうひとつの生き方、スタイルをまとめた本。

日本ではバブル崩壊後、大企業が倒産やリストラを行い、今までの日本の強さであるところの終身雇用制が崩壊していって云々、というストーリーは身近なものであるのだけど、アメリカでも同様のことが起きていたというのは、あまり認識がなかった。

終身雇用制というのは自動車なんかの高度に集積され、画一的なものを工場で大量生産する製造業において非常にメリットが大きいスタイルであって、製造業が新興国にシフトしていった現在、先進国では終身雇用というのはデメリットが大きい。

企業のライフサイクルも短くなり、多くの従業員の雇用を長期間維持することは現実的ではなくなってきていて、サービス業や情報産業などの個別のカスタマイズに価値をおき、マーケットの変化に対応しやすい小規模な企業のほうが生き残りやすくなってきている。その究極のかたちがフリーエージェント(フリーランス)だ。

小規模企業やフリーランスのメリットのひとつは、1つの会社に勤めないで複数の顧客(企業)の仕事を分散して行うことでできること。ポートフォリオを組むことができるので、仮にどこかの顧客企業が業績不振になったとしても、自分への損害をある程度絞り込むことができる。もしそこでフルタイムで働いていたとしたら急に失業者になってしまうかもしれない。変化の激しい時代にはひとつの企業に勤めるよりもフリーランスでいたほうがより安定している、ということがいえるわけだ。

フリーランスでいることは時間を自由にアレンジすることができるのもメリットだ。7時に起きて8時に電車に乗って,9時に出社して17時に一旦終わるけど、毎日、残業は21時までで家に帰ると22時で、子どもはもう寝ている、というような生活はする必要がなくて、例えば、夕食の時間は家族と一緒にすごし、子どもを寝かしつけてから夜再び仕事をする、というようなことだって全然できてしまう。

このようなことが可能になったのは、上に書いた産業構造の変化と共にITの発達によるところが大きい。以前は会社でないと扱えなかったコンピュータが自宅で使えるようになり、インターネット回線の高速化、クラウドの発達などが相まって、特に会社で仕事をしなくても自宅で同じことができるようになってしまった。

こういう視点でみると、IT革命というのは、やはり産業革命に次ぐ大きな産業構造の変化だということになるのではないか。それにより人々の生活スタイルは大きく変わっていく。

もちろんフリーランスでいることでの困難さということはある。たぶん仕事は自分で見つけていかなくてはいけない。会社だったらどこからとも無く仕事が降ってきたりするわけだが、自ら動いて営業活動がきちんと出来ないとフリーランスでいることは難しいだろう。その他、税金周りや売上の回収など、色々たいへんな部分というのはある。このへんがやり切れないようだとフリーランスで居続けることは難しいだろう。

今、僕はCoworkingについて結構パワーを裂いて(その割には細々と)やっているが、実はCoworkingというのは、このようなフリーランスの困難さ、というものに対するセーフティネットのようなものとしても機能すると思っている。例えば、Coworking仲間の誰かが仕事を手伝って欲しい、というふうに依頼してくるかもしれない、確定申告の手続が分からなければ、横にいる人が教えてくれる。自分も自分の持っている情報やノウハウ、アイデアを隣の誰かに教える。そういう互助的なネットワークをもつことによってフリーランスでいることの困難さをある程度カバーできるのではないか。そう思っている。

というわけで「フリーエージェント社会の到来」は8年前の本とは思えないほど、今にマッチした本だと思う。読んだ人も多いと思うが、読んでない人はぜひ。