2010年6月11日金曜日

システムだけでは何も解決しない

個別のお話ではなくて一般論として。

道具は使う人が目的を持って、そしてそれを使いこなそうという意志と努力があってはじめて機能します。

例えばスプーン。私の長男は先日1歳になったのですが、徐々に手づかみで食事をするようになってきています。彼は空腹を満たすという目的をもっていますが、スプーンという道具はまだまだ彼にとって難しいようで使いこなそうという意志は見られず、食べ物を手づかみをしてしまいます。

空腹を満たしたい、食事をしたい、という目的に対しては別に手づかみでも良いのです。おなかは満たされます。

しかし、手を汚さずに食べたいとか、熱いものは触れないのでどうにかしたい、という副次的な欲求を解決するためにはスプーンを使う必要があります。そのために彼は今後、数年間かけてスプーン、フォーク、箸などを使いこなすための訓練をしていくことになるでしょう。特に箸なんかは皆さんも経験したかと思いますが、使いこなすためにはなかなかの努力が必要なものです。僕や妻が使い方を教えたり、付き添ってみてたりということはしますが、飽くまで彼の努力によって使いこなせるようになっていきます。

ここで話は変わって企業へのシステム導入を考えてみます。


たとえばよく頂戴するご相談で営業状況の把握をすることによって営業力を強化したい、業務の効率化を図りたいといった目的があります。

営業状況の把握をするには様々な手段があります。顧客企業毎にファイルを作ってそこに手書きした打ち合わせの報告書などをファイリングしていき、それを社内で共有する、という方法。コンピュータが広く導入される以前はこのようなことがなされていました。これで取り敢えずのも目的は達成されます。

しかし、手書きは時間がかかるし、ファイリングも面倒。共有するにもみんなで同時に同じファイルを見るのは困難です。また目的の情報を探し出すのにも時間がかかります。

これをどうにか、報告もファイリングも共有も検索も簡単に行いたいという副次的な欲求がでてきます。じゃあこれを実現するためにはコンピュータという道具を使いましょう、最近はSaaSとかクラウドがあって比較的低価格で実現できますよ、ということになります。

ここですが、飽くまでコンピュータは道具です。漫然と何かシステムを入れたら解決する、というのはありえません。小さい頃の箸と一緒で、それ相応の努力をしないと使いこなせるようにはならないのです。

私は主に企業でのCRMなどをはじめとした業務システムの導入のコンサルティングをさせていただいていますが、我々はどこまでいっても使いこなすための「お手伝いをする」という立場です。我々がどんなに頑張ってもユーザが目的と意志を持たない限り、システム導入は成功しません。父親や母親のように、というような出過ぎたことは思いませんが、傍らで見守る、というのが我々の立場です。使いこなすのは飽くまでお客様になります。

よく「コンピュータを入れてボタンをポチッと押せばばーっと解決」みたいなものがありますが、やはりそれは幻想です。お客様自身が目的を持って、使いこなす努力をしなくてはどうにもならないものです。

クラウド化、SaaS化による企業システムの低価格化に伴って、使いこなせる企業と使いこなすことができない企業の差がより顕著になってきます。

私は全ての企業にこの恩恵に浴して貰えたらと思っております。企業の成長はシステムが解決するではなく、お客様の目的と意志が解決するのです。意志を持ったお客様の努力を我々はとことんお手伝いします。

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